「悩みのるつぼ」

朝日新聞be 2025.6.7.

「転職癖のついた私、どうすれば」

30代 女性

「何回転職したって全然オッケーです」

タレント 野沢直子さん

相談内容:

大学卒業後、7回転職。

いまは、新しい就職先が決まり、

準備中。

これまでの退職理由としては、小さなことはいろいろあるが、

ひとつ共通しているのは、「自分の存在意義」

わからなくなってくること。

今いる職場で私は役に立てているか。

会社の業績に貢献できているか。

いただく給与に見合った仕事はできているか。

考えれば考えるほど、思い悩み、最終的に退職に至る。

元々人から褒められても、お世辞で言ってるのだろうと、

素直に喜べなかった。

こうした自尊心の低い性格も影響していると思う。

退職してからも、何をしても続かない、継続できないダメな私と

否定的になり、なかなか前に進むことが難しかった

同じ会社で長い間働くには、ネガティブな考えに行きそうな時、

どう気持ちを持っていけば良いか。

自分に自信をつけるには、どうすれば良いか。

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回答:

まず、ひとつの会社に長く務めるのが美徳というのは、固定観念。

そんなことに縛られて生きる必要はない。

特に相談者はまだ30代と若く、自分を責めるのはもったいない。

転職はすでに過去のこと。そのことで自分を責めるのはやめよう。

次の仕事を決めた基準は何?

今度こそ長く勤められそうというより、その仕事に対して、

どれだけ情熱を持てるかに重きを置いた仕事の選択をしてほしい。

相談者さんが好きになれる仕事を選択してほしい。

仕事が好きで夢中になれるなら、結果はおのずとついてくる。

また結果うんぬんよりも、その過程で努力している自分の方が大切と思えたり、

やるだけやって結果が出せなくても、前回の失敗を踏まえて、

また次につなげればいいと前向きになれると信じている。
仕事に関していろいろな考え方があると思うが、

仕事に行くのが楽しいと思えるのが一番。

仕事自体は好きでなくても、そこで働いている人が好き。

それでもいい。

まだ30代、やりがいのある仕事をこなした達成感、

誰かの役に立っている満足感が得られるような尊い仕事場を探して、

人生をエンジョイして。

そういうことを感じられるのが人生の醍醐味。

それを感じられる職場を探して、』あと何回か転職しても、

全然オッケーと思う。

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カウンセラーからの回答:

相談者さんは、7回の転職を経て、また一歩踏み出そうとしておられます。

何度も自分に問いかけ、立ち止まり、軌道修正をしようとした勇気ある人。

決して「ダメな私」ではありません。

新しい職場、新しい人間関係。転職するのは、結構エネルギーが必要です。
年を重ねるにつれて、慣れない職場で一から人間関係をつくるのは、

しんどいことだとお察しします。
退職のたびに浮かんできた「自分の存在意義」
これは、相談者さんが、“ただ勤める”だけでは満足できない人だということ。
どこかに属するだけでなく、「この場所で、自分は意味ある存在でいたい」という強い願いがある人なのだと思います。

それが、“存在証明”のようになりすぎると、つねに自分を「役に立っているかどうか」「貢献できているかどうか」という評価軸で見てしまう。
それはとても苦しいこと。
 

なぜなら、「存在すること」=「価値がある」という実感を、
自分の外側(成果・他者評価・給与)に預けてしまっているから。


でも本来、「存在意義」は外に探すものではなく、自分の内側に芽生えるものです。

・朝起きて、自分で自分のごはんを用意した
・疲れた同僚に「おつかれさま」と声をかけた
・締め切り前、もうひとがんばりした


こうした小さな日々の行動こそ、「私はここにいていい」と感じられる土台
それは、他人に評価されなくても、あなたの内側に確実に積み重なり根を張っていきます。

そして、自尊心の話。
「お世辞だろう」と思ってしまう気持ちの奥には、きっと「信じたのに裏切られたらどうしよう」という痛みや、子どもの頃から「認められた経験が少なかった」という背景があるのかもしれません。
だからこそ今、意識的に自分の心の中で、“ほめ言葉”を育てていきましょう。

それが、自信につながっていきます。

たとえば昨日、「落ち込んだけど、ちゃんと前に進もうとしている自分、エライ」
今日、「ミスしたけど、丁寧にリカバリーした自分、よくやった」
 

そんなふうに、日記にひとこと書くことから始めてみてください。


同じ会社で長く働くには、ネガティブに引き込まれそうな時に“思考”を止めて、“行動”に切り替えるのがコツです。

「役に立っているか?」と悩んだら、ひとまず深呼吸。
「今できる小さな行動はなんだろう?」と問い直してみてください。
迷ったときは、自分ができることを、ひとつだけ丁寧にやってみる。
それを、今日の“意味”にしてみる。

「自分の存在意義」は、職場の中にも、評価の中にも、答えがあるとは限りません。

けれど、「ここにいていい」と思える小さな積み重ねが、やがて大きな確信に育っていくでしょう。